2024.08.07
段ボール 豆知識『物流2024年問題』とは? -物流業界が抱える課題と改善に向けた取り組み-
物流2024年問題とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称です。
この法案でドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることにより様々な影響が出ています。
長時間労働を良しとしてきた物流業界を是正するため必要な法令ではありますが、労働力不足の続くなかでの実施は物流の2024年問題という負の側面も引き起こしているのは事実です。
この項では今まさに進行している物流の2024年問題について、物流業界を取り巻く環境を含め考えていきます。
もくじ
物流業界の状況(2024年までの状況)
2024年現在日本では物流業界に限らず深刻な労働力不足状態にあります。
特に物流業界ではEコマース市場の拡大により急激に物量が増加したこと、免許制度の変更でドライバーのなり手が減ったことで以前より労働力不足にありました。
2024年までの物流業界の状況は次の通りです。
・トラック運転手の人手不足
2024年以前から労働条件の厳しさから、トラック運転手のなり手が不足していました。
特に2017年以降取得した普通免許では4tトラックを運転できず、中型免許を取得する必要が生じました。
若年層でのドライバーのなり手が減り、慢性的にドライバー不足の状態です。
また、ドライバーの平均年齢は50歳を超えており、10年以内に多くのドライバーが定年を迎えることが予想されより深刻な状況が危惧されています。
・物流コストの上昇
物価高・円安基調が続き、燃料費も上昇。さらに人手不足を補うために、社会全体で人件費が上昇しています。
物流コスト全体も上昇し、運賃も値上げ基調にはありますが荷主側のコスト削減要求もあり充分に価格転嫁ができているかは不明瞭です。
・配送効率の低下
コンビニ等への時間指定配送など以前からドライバーに無理を強いる状況もありました。
Eコマースの発展に伴い個別配送が増加したことで配送の効率が低下しさらなる労働力不足・コストアップが発生しています。
今後も配送の遅延やミスが増える可能性があります。
・環境規制への対応
環境保護の観点から、物流業界でもCO2排出削減が求められています。
排ガス規制やエコトラックの導入などコスト面での負担が強いられています。
2024年の「働き方改革関連法」による労働時間の制限は、この状況に追い打ちをかけたことになります。
2024年問題の影響
・時間外労働の上限規制の適用
・拘束時間や休息時間、連続運転時間の基準を改正
・割増賃金率の引き上げ
が法令で2024年4月より実施され、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されました。
これによって下記の影響があります。
【物流業界側の影響】
・労働時間の減少から輸送量が減る(売上の減少)
人員をそのままにした場合は総労働時間が減るため輸送量が減ります。輸送量の減は売上の減です。
今と変わらない売上を確保するには人員の増員や運賃の値上げなどが必要となます。
・残業代削減が起因の収入減によるドライバー不足
時間外労働時間が減るためドライバーが受け取る残業代も減ります。
賃上げもあるとは思いますが残業をあてにしていた人の収入は下がります。
他職種へ転職も想定されます。採用難もあり人員確保は簡単ではありません。
・利益の減少
労働時間の減少を人員増員で補えたとしても、採用・教育コスト、社会保険料負担などもあり人件費率は増えます。
売上が以前と同じであれば利益を圧迫します。
季節的な仕事量の変動を残業で対処していた場合も人員増は固定的な費用負担を企業に強いることになります。
1人で長距離を運転するような運送形態も見直されることになりこれもコスト増の要因です。
人員流出により、輸送量の減少でさらに売上利益が減るという負のスパイラルも想定されます。
【荷主側の影響】
・物流コストが増大
既存ドライバーの確保や増員のため物流会社も賃上げを行わざるを得ない状況です。
賃上げ分を運賃に転嫁することで、荷主にとってはコスト増となり、荷主の利益を圧迫します。
他に経費削減ができなければ荷主側の商品の値上げにもつながり、他の要因も相まって社会全体としては値上げ基調となっています。
・輸送時間の増加
ドライバー不足や、ドライバーの時間外労働・休日出勤の制限により、従来の輸送ができない場合があります。
急な発注、短時間での長距離輸送などは出来ずに輸送時間・配送にかかる日数が増えます。
納期の遅延も想定されます。
改善に向けた取り組み
このように物流の2024年問題は、社会にかなり深刻な影響を与えます。
物流業界や荷主だけではなかなか解決はできない構造的な問題ではありますが、官民で以下のような取り組みが進められています。
【労働環境の改善】
労働時間の短縮や労働条件の改善により、トラック運転手の確保と定着を図ります。
具体的には、荷積み・荷下ろしの負担軽減のためパレット輸送を推進、パレット規格の共通化などの取り組みが挙げられます。
【自動運転技術】
自動運転トラックも近い将来導入が考えられており、運転手不足の解消や運転効率の向上が期待されます。
また、近年高速道路の道路以外のエリア(中央分離帯や路肩)を使った自動輸送システムが検討されていると聞きます。
【自動化とデジタル化】
労働力不足を補うために、自動倉庫等の省人機械を導入する企業も増えています。
今後AI技術を活用し配送ルートの最適化できれば、燃料費の削減や配送時間の短縮が期待できます。
【エコロジカルな取り組み】
燃費の良い車両の導入や、配送ルートの最適化によるCO2排出削減など、環境に配慮した取り組みも同時に検討されています。
まとめ
これらの『物流2024年問題』に対して、官民、また業界全体での協力していく必要があります。
その中で技術革新(DX)がひとつの解決策として期待されています。
先に述べたように倉庫設備のデジタル化・自動化、自動運転技術、AIの活用などの技術革新が、省人化やコストダウンに繋がり全体を最適化します。
自動化技術やデジタル技術は現状大きなコストがかかるため大手からの対応となります。
日本の物流を支える中小の会社にとってはまだ先の話であるため、すぐに解決できるわけではありません。
物流の2024年問題は、雇用や物価といった社会全体に深く関わる問題でもあります。
直接物流当該の物流会社や、荷主企業の努力も重要ですが、我々消費者も通販での置き配の利用や、再配達の防止などが物流コストの低減に役立つことを理解することが大事です。
私たちイクソブ株式会社は、物流を支える段ボールケースを製造している会社です。
段ボールはご存知のようにかさばる商品であるため、原価における運賃比率が極めて高くなっております。
これまでは所定位置までの商品の搬入(2F上げや棚までの搬入)に対応してきた場合もありますが、軒先降ろしが基本です。
今後ドライバー保護の観点からも随時ご相談させていただく場合がございます。
何卒よろしくお願いいたします。